北海道帯広訪問2025レポート

2025年7月31日~8月1日

今年も去年に引き続き、「東京の現場を離れて、いつも美味しい小麦粉や農産物を提供してくださっている十勝の生産者さんたちに会いに行くぞ!」という代表の掛け声によりメンバーを入れ替え、7月末に北海道出張に行って参りました!


Day 1 (2025/7/31)

Bakery chemin(ベーカリーシュマン)

初めに伺ったのは帯広市郊外にあるBakery chemin(ベーカリーシュマン)さん。 小麦畑が目の前に広がる土地に、小麦色のコンテナで作られた店舗が可愛らしいお店。 十勝産の小麦をブレンドしたパンは、農家さんの作業時の食事やおやつとして食べやすいように 工夫されているそうです。

更に発酵に48時間かける天然酵母のパンや、十勝産の野菜を使用したパンなど、オーナー岡田昌樹さんのこだわりを強く感じられました!
ベーカリーシュマンさんの敷地には畑が見渡せるテーブルと椅子が設置されており、自然を感じながらパンを食べることができます。
そしてそのすぐ隣には大きなロール状の藁があります!(写真の後ろ)

この大きな藁の塊は「麦稈(ばっかん)ロール」といい小麦を収穫した後に残る茎や葉の部分をまとめてロール状にし、牛や馬の寝床として使用するものだそうです。無駄を出さないのはもちろん、畑作農家と酪農家がお互いに協力している関係が感動しました。

Bakery chemin
代表 岡田 昌樹 氏
https://www.instagram.com/bakery_chemin


十勝とやま農場

小豆に関するお話を伺ったのは、「十勝とやま農場」さんの外山高祥さん。写真のポーズはとやま”農場の「と」をイメージしています!
主に大豆や小麦や芋などを作られていて、最近では水田ではなく、土に植えるお米を栽培したり と新しいことにもチャレンジされている農家さんです。

外山は全体面積の約10分の1で小豆を生産しており、減作を考慮して販売量の約1.5倍量を目安に作られているそうです。
7月の中旬から花が咲き始めて、それにともなって鞘も成長するのが小豆だそうですが、 今年は特に暑い時期が長く、小豆の品質のばらつきが懸念点と語られていました。

同じ畑で同じ作物を作り続けると特定の栄養が不足し害虫の発生にも繋がります。そのため「輪作」と呼ばれるサイクルがあり、時期を開けたり別の作物を育てることで土壌の状 態を保つことができます。

外山さんの小豆には「根粒菌」という根に付く良い細菌がついていました。
これは土壌に栄養があり、肥料に依存しない育成がされている証拠でもあります!
畑作の可能性を常に広げ続けようとする姿からは強く感銘を受けました!

合同会社 十勝とやま農場
外山 隆祥 氏
https://toyama-nojo.shop-pro.jp/


toi

北海道産のオーガニック小麦を使用し、自家製粉まで しているこだわりのパン屋さん。
レジ奥を少し覗き込むと、なんと手作りしたという石窯が見える。温度計はあるものの、焼き時間などは感覚の部分も大きいと語られていました。

ライ麦100%の「ロブロ」は優しい酸味で食べやすく、噛むほどに旨味と甘みが広がる味わい。酸味がキツくなくて驚きました!

「やるからには自分の本当にやりたい事をやってきた」というのが今の形だそうで、パンと真摯に向き合う姿勢、妥協をしない信念の強さはパン職人の本来あるべき姿だと感じました。

toi
オーナー 中西 宙生 氏
https://toi527004.owndshop.com



しんむら牧場

続いてお伺いしたのは、毎年お世話になっている「十勝しんむら牧場」さんです。

広々とした土地で放牧酪農をしているので、牛もストレスなく育つことができ美味しい牛乳を絞ることができます。健康な牛は、健康な土や草を作ることにも繋がるので結果的にバランスの取れたサイクルが成り立っています。
 特に家畜特有の匂いが全くしないのが驚きでもあり、放牧がいかに理想のスタイルであるかを感じました。しかし当然メリットだけでは無く広い土地の整備や管理はとても大変な作業で手間をかけられていることが伝わってきました。

しんむら牧場さんの牛乳は、現在ビースクエアード吉祥寺店のカスタードクリームで使わせていただいています。牛乳となった状態しか知らなかった私には、フレッシュで甘みとコクのある牛乳をどのように作られているのか美味しさの源を知る貴重な体験となりました。

有限会社 十勝しんむら牧場
新村 恵理 氏
https://milkjam.net


前田農産

毎年お世話になっている前田農産さんに今年も訪問させていただきました。
今年はコンバインによる「春きらり」の収穫を体験させていただきました!
一面の小麦畑はとても美しく、コンバインによる小麦の収穫は迫力満点でした。

収穫した小麦は、一度乾燥させてから一緒に入ってしまったゴミなどを除去します。その後、虫の発生を抑えるために1600トンもの許容量のある貯蔵庫で冷蔵保存されています。

北海道農家の課題であった農閑期(冬)、前田農産さんはポップコーンの栽培をすることでこの問題に向き合いました。電子レンジによる調理を可能にしたり加工のラインもご自身で組み立てています。
2025年3月5日からTOHOシネマズ日本橋・六本木ヒルズでこのポップコーンが販売されています!


更に工程の管理も徹底しており、「いつ、誰が、どこの畑で、どんな目的で、どんな機材を使って…」など細かく見えるようになっていました。それをふまえてミーティングを行い、より作業を効率化することができるのだそうです。作業する人の経験値も考慮した働き方はとても素晴らしいと感じました!

前田農産食品 株式会社
代表取締役社長 前田 茂雄 氏
https://www.co-mugi.jp


焼肉KAGURA

夜ご飯をいただいたのは焼肉KAGURAさん。地元の食材を使用した焼き肉はどの部位もとても美味しかったです。
赤レンガ倉庫を使用した店舗は、地元の方々がこの建物を残したいという想いから始まったそうです。

食後は隣の「BAR守破離(バーシュハリ)」さんで、北海道十勝産ぶどう100%の赤ワインをいただきました!とても飲みやすく優しい味わいでした。


焼肉KAGURA
http://www.y-kagura.jp/
BAR守破離(バーシュハリ)
https://www.instagram.com/toma_shuhari


Day 2 (2025/8/1)

麦音

十勝平野にある日本一の面積を持つパン屋さん。
広大な土地の中には小麦畑やブルーベリー、ズッキーニ等が生えており、それらを眺めながら開放的なテラス席で食事をすることができます。店内には風車の力で動く石臼があり小麦を挽いている所を実際に見ることができます。パンを食べるだけでなく、見て感じて楽しめるお店でした!

店内に入って驚いたのはパンの種類の多さでした。コの字型のオープンキッチンで所狭しとたくさんのパンが並んでました。オープン直後くらいでしたが、すでに店内には多くのお客さんで賑わっていました!

チーズのパンをいただいたのですが、パンに合うように自分たちでチーズ自体を開発されたそうです!
美味しさはもちろんパンや食材に対する探究心に感銘を受けました。

今後は敷地内に学校を建てたいと語られており、パン屋をパン屋だけで終わらせずに様々なことにチャレンジされている姿は一人のパン職人として心を打たれました。

集合写真の指のポーズは麦の穂をイメージしています。

株式会社 満寿屋商店
代表取締役社長 杉山 雅則 氏
https://www.masuyapan.com/



アグリシステム株式会社

アグリシステム株式会社さんは「生きた土、健康な作物、人間の健康」を理念に農業のコンサルティングや、北海道の農家さんと契約し農作物の加工から販売まで行っています。

製粉業と農作物流通を基盤に新たな取り組みとして、「リジェネラティブ農業」の普及、実施を行っています。近年農業では農業機械、農薬、化学肥料の使用により土壌が痩せてしまい、栄養価の低い作物が増えている。その結果、健康被害も増えてきているそうです。
そのためまずは環境を自然な物にし、生物多様性の保護と健全な土壌を作っていく事を目標としています。

現在は土壌構造の改善に適しているライ麦を積極的に活用し、環境と市場のニーズの両面から注目が集まっています。


大きな貯蔵庫には、とても大きな袋に分けられた小麦が大量に並べられていました。この一袋づつに、生産者や成分等が細かく記載されており丁寧に品質を管理されていました。


製粉所ではクリーニングのマシンや、石臼が動いている様子を見せていただきました。風の力を使うことで小麦に傷や熱を与えずに加工できるそうです。

品質管理や加工方法などを見せていただいて、一貫して安心安全、健康のためを意識していることが強く伝わってきました。
我々ビースクエアードも「リジェネラティブ農業」に強く関心を持ち、何かしらのかたちで携わって行けたらと考えています。

アグリシステム 株式会社
代表取締役社長  伊藤 英拓 氏
経営企画室 室長 遠藤 智樹 氏
販売グループ   佐藤 絵里子 氏
販売グループ   小林 紀文 氏
https://www.agrisystem.co.jp


なまら十勝野

最後に伺ったのはビースクエアードでもいくつか野菜を使わせていただいているなまら十勝野さんです。
「なまら」というのは北海道弁で「とても」という意味です、そこに十勝と野菜を組み合わせて「なまら十勝野」となったそうです。芽室町の農家さんが集まって結成されており協力し合って作物を育てています。


とうもろこしの選別作業は人の手で行われていました、なんと触っただけである程度の良し悪しが分かるそうです。
その場で剥いたとうもろこしは生でも甘くて水々しくて驚きでした!

なまら十勝野さんでは、じゃがいもは9、10月に収穫して冷蔵庫で熟成させ、2月になると「越冬」としています。そこから更にもう一年経つと「超熟」となります。
しかし超熟になる過程で半分は腐ってしまうため、とても貴重で価値の高い食材ですが、飲食店では重宝されるほどの美味しさを秘めています。

改めて食材と農家さんに感謝しなければいけないなと感じました。


たけうち農場 竹内 敬太 氏
高道農場   高道 豊 氏
小林農場   小林 健次 氏
鳥本農場   鳥本 孟宏 氏
https://namaratokachiya.my.salesforce-sites.com/


今年もアテンドをしていただいたの は、小川尚子さんです。
2日間の研修スケジュールを組んで頂き誠にありがとうございました。

今回の北海道研修で得た物を活かして、より良い物を作れるように精進して参ります。

また多くの訪問先と繋いで頂き、我々としても今後の活動の幅が広がったと感じております。

今後ともよろしくお願いいたします。


モン・トレゾール
http://montresor.o-m-a.jp


書いた人:納谷 俊平

普段はベーカリースタッフとしてパンの製造を行っています。またInstagramや商品の撮影などもさせていただいてます。

今回の研修が初めての北海道だったこともあり、どの景色を見てもとてもきれいで感動しました。
研修を通して普段使っている食材への意識が変わったように思います。この経験を活かし、生産者さんとお客様の間に立つ一人の職人として精進していきたいです。
https://www.instagram.com/bsquaredtokyo_kiyosumi